企業にとって、情報漏洩は恐ろしい悪夢です。社内の重要な情報が外部に漏れ出ると、経済的損失はもちろん、信用問題まで引き起こす可能性があります。だからこそ、企業は情報漏洩対策に万全を期すべきです。
しかし、具体的にどのような対策を取ればいいのでしょうか?
本記事では、情報漏洩を防ぐための具体的な手段を6つ紹介します。これらの対策を学ぶことで、情報漏洩のリスクを大幅に軽減し、企業の安全と信頼性を高めるための道筋を描くことが可能です。
これから読むあなたにとって、この記事が情報漏洩対策のガイドラインとなり、実践の一助となることを願っています。
企業で情報漏洩が起きる原因とは
企業で情報漏洩が起きる原因はさまざまです。
たとえば、過失による情報漏洩や内部不正など自社の問題なのか、サイバー攻撃など外部からの攻撃なのかによって対処法なども変わってきます。
情報漏洩が起きる原因を3つご紹介します。
過失(人的ミス)
情報漏洩事件の中でも、従業員の過失によるものが非常に多いです。その代表的な例として、重要な書類やPC、USBメモリ等が入ったバッグを公共の場所に置き忘れることが挙げられます。
これらのミスによって、知らぬ間に企業情報が外部に漏れるケースが多々あります。これらの過失による情報漏洩は、予防が可能です。
具体的には、従業員への教育や研修、情報の取り扱いに関するルールの設定などが効果的です。
内部不正
一方、過失によるものだけでなく、故意に情報を漏らすケースも少なくありません。退職者が新しい事業を始める際や他社に転職する際、競合情報を持ち出す事例が見受けられます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査によれば、中途退職者による情報漏洩は2020年時点で36.3%でした。
その他、社内の不満から情報を意図的に漏らす事例もあるため、社内からの情報漏洩に対するセキュリティ対策も重要となります。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」報告書について
サイバー攻撃
最後に、サイバー攻撃による情報漏洩について説明します。不正アクセスやウイルス感染によって企業内部の情報が盗み出される事例が増加しています。
とくに、機密情報を狙った攻撃が多いです。個人情報の価値が増えた近年では、ECサイト運営企業など、多くの個人情報を持つ企業が攻撃対象となりやすいです。
パスワードリスト攻撃、フィッシングメール、マルウェア感染など、多様なサイバー攻撃が増加しているため、その対策は年々重要性を増しています。
情報漏洩の4つのリスクとは
情報漏洩は、企業に対してさまざまなダメージがあります。中には、信用失墜など重大なリスクも存在します。
場合によっては会社のイメージダウンだけでは済まず、多くの損害賠償責任や倒産の危機を負うことになるでしょう。
主な4つのリスクについて詳しく解説します。
社会的な信用が低下する
情報漏洩事件は、企業の社会的評価に深刻なダメージを与える可能性があります。
大切な顧客情報が不適切に取り扱われたと明らかになった場合、その組織への信頼は一気に失墜します。その結果、顧客からの信用を失うだけでなく、取引先との関係も損なわれる可能性もあるでしょう。
信用の回復は時間と労力を要し、その過程で経済的損失も生じる可能性が高いです。
顧客への損害賠償が発生する
情報漏洩が発生した場合、顧客がその影響で損害を受けたときには、企業は法的責任を問われることになります。
このような場合、企業は賠償金を支払う義務が生じる可能性が高いです。この費用は大きな経済的負担となり、企業の経営に深刻な影響を及ぼすことがあります。
なりすまし・不正利用に発展する
情報漏洩が起きると、その情報が悪用されるリスクも高まります。とくに個人情報が漏洩した場合、不正な手段により顧客のアカウントがなりすましや不正利用の対象となる可能性があります。
顧客が直接的な損害を受けるため、信用失墜や、関係改善が難しくなる可能性が高いです。
Webサイトの改ざんが起こる
情報漏洩によりシステムの弱点が露呈した場合、サイバー攻撃によってWebサイトが改ざんされるリスクも増えます。
これにより、企業のブランドイメージが損なわれるだけでなく、Webサイトの利用者が迷惑を被ることもあります。また、一度改ざんされると、それを正常に戻すための時間と費用が必要になるでしょう。
補足:情報漏洩は刑事罰のリスクもある
情報漏洩は、ただ経済的な問題だけでなく、法律的なリスクも含みます。情報漏洩を起こした企業は、国から是正勧告を受けることになり、是正勧告に従わない場合は、罰金や禁固刑などの刑事罰を受ける可能性があります。
このような結果は、企業の評価をさらに低下させ、その存続を脅かす可能性があります。
企業が行うべき6つの情報漏洩対策とは
情報漏洩を防ぐには、普段から教育や研修を行ったり、セキュリティ対策を行ったりして内部・外部ともに情報漏洩対策をする必要があります。
企業が行うべき情報漏洩対策のうち代表的な対策方法を6つご紹介します。
情報セキュリティのガイドライン策定する
企業にとって情報セキュリティのガイドラインは、情報漏洩を未然に防ぐための対策の一つです。これは、従業員が遵守するべき一連のルールを定義します。
たとえば、むやみに情報を放置せず、情報の持ち出しや不要な私物の持ち込みを禁止し、情報を適切に処理または廃棄するといった事項が含まれます。
また、外部での情報の公言を禁止したり、問題が発生した場合には直ちに管理者に報告を行ったりするよう求めることもあるでしょう。
これらのガイドラインは、人為的な情報漏洩を最小限に抑え、情報漏洩事故の予防に寄与します。
社員にセキュリティ教育を実施する
情報セキュリティの重要性を従業員に理解させ、意識を高めるためには、定期的なセキュリティ研修が必要不可欠です。
研修では、パスワード管理や電子メールの誤送信防止、定期的なデータバックアップ、ウイルス対策、安全な無線LANの使用方法、SNSの利用ガイドラインなど、さまざまなトピックをカバーします。
研修後には、その効果を確認するためのテストを行い、必要であれば再教育も実施するのがオススメです。
守秘義務契約の締結する
情報漏洩対策の一部として、従業員や関係者と守秘義務契約を締結することも重要です。
これは、情報を適切に取り扱い、無許可の情報公開や情報の不適切な使用を防ぐための法的な措置です。
情報の管理体制を整える
企業の情報管理は、情報が必要なときに利用可能な状態を維持しながら、情報漏洩を防ぐ体制を整えることを目指します。
重要な顧客情報や取引先情報など、経営に不可欠な情報を保護するとともに、情報の取り扱いを容易にすることを両立させる必要があります。
情報を暗号化する
情報の暗号化は、情報漏洩対策の重要な一部であり、データ自体が流出した場合でも個人情報の保護に寄与します。
暗号化は、データを特別な手順を経て別の形に変換することで、オリジナルのデータを不可逆的に変更します。変換されたデータは、暗号キーを用いて元の形に戻すことが可能です。
暗号キーの管理は非常に重要であり、適切な取り扱いが求められます。
セキュリティソフト・ツールを導入する
不正アクセスから企業の情報を保護するためには、セキュリティソフト・ツールの導入が効果的です。これらのシステムは、不正なログインを検知し、その情報を通知またはブロックすることで、情報漏洩を防止し、被害の拡大を防ぐのに役立ちます。
企業が社員に徹底すべき4つの情報漏洩対策
企業が行うべき情報漏洩対策について解説しました。
しかし、情報漏洩対策を行うだけで情報漏洩を完全に防ぐことは困難です。完全に情報漏洩を防ぐには、社員にルールを徹底させる必要があります。
企業が社員に徹底すべき情報漏洩対策を4つご紹介します。
各ルールを徹底させることで、情報漏洩発生の可能性を最小限に抑えられるでしょう。
情報の持ち出し・持ち込みを禁止する
企業の情報は非常に重要な資産であり、その管理は最優先事項となるべきです。社員には、情報の不適切な持ち出しや持ち込みを防止するように指導することが求められます。
社員が自分の携帯電話やパソコンを企業のネットワークに接続しないこと、また、職場のパソコンを軽々しく外部に持ち出さないことなどが具体的な対策となります。
また、社員が持ち出す機器にはデータ暗号化や端末ロックなどの安全対策を施すことが重要です。
極めて重要性の高い情報が記録された書類やパソコン、USBメモリなどの持ち出しは、漏洩の可能性が高まるため、避けるべきでしょう。
仕事とプライベートのメールアドレスの使い分けも重要な一環です。最近では、プライベートのスマホを持ち込んで仕事に使用する環境が広がっていますが、使い方次第で情報漏洩の危険が増すため、注意しましょう。
私用の端末がウイルスに感染している場合、それが企業のネットワークに広がる可能性があるため、企業のセキュリティ対策はどれだけ厳重でも、ウイルスに感染した端末を持ち込むこと自体が危険です。
情報の放置・廃棄は慎重に行わせる
企業情報の適切な管理は、単に持ち出しや持ち込みのみに限らず、情報の放置や廃棄についても対策が必要です。
情報の放置は、故意でなくても情報漏洩のリスクを高める可能性があります。
たとえば、書類やパソコン、USBメモリなどがそのまま机の上に放置されていれば、それが第三者の目に触れる可能性があるでしょう。また、パソコンのロックを忘れて外出すると、不正なアクセスが可能となってしまいます。
情報の廃棄も同様に注意が必要です。古い書類や使用しなくなったUSBメモリなどは、そのままゴミ箱に捨ててしまうと、情報が外部に漏れるリスクがあります。
シュレッダーで紙類を破棄したり、専門業者にデータの完全消去を依頼したりするなど、情報をしっかりと消去することで、情報漏洩のリスクを防げるでしょう。
不用意なアクセス権限の譲渡を禁止する
企業の情報を管理する上で、必要な人だけに情報へのアクセス権限を与え、それ以外の人がアクセスできないようにすることが大切です。
とくに、アクセス権限の管理はセキュリティの基本であり、むやみに権限を付与すると情報漏洩のリスクが高まります。
また、部署間の移動や昇進、退職などに伴いアクセス権限の見直しを怠ると、必要以上の情報にアクセスできる状態が生じる可能性が高いです。常に最新の状況に合わせてアクセス権限を更新し、必要な人だけが必要な情報にアクセスできるようにすることが求められます。
安全性の低いサイト・メールへアクセスさせない
ウイルスやマルウェアは、安全性の低いウェブサイトやメールから侵入することが多いです。そのため、社員に対して、むやみにウェブサイトを閲覧したり、不審なメールを開いたりしないように教育することが重要です。
具体的には、企業内でのインターネット利用を制限したり、メールの添付ファイルを開く前にセキュリティチェックを行うなどのルールを設ける必要があります。。
また、定期的にセキュリティ教育を行い、社員一人ひとりが自身の行動で企業全体のセキュリティを守る意識を持つことが求められます。
情報漏洩が起きてしまった場合、企業が取るべき対策
情報漏洩対策を行ったとしても、100%防げるわけではありません。万が一情報漏洩が起きてしまった場合の対策について詳しく解説します。
もし情報漏洩が発生しても、対策をしっかり行えば被害を最小限に食い止められるかもしれません。
情報漏洩の発生状況を把握する
情報漏洩が発生した際、最初に行うべきことはその状況を詳細に把握することです。どの情報がどのように漏れたのか、どの程度の範囲に広がったのかを明確にすることが求められます。
たとえば、パスワードや個人情報など、具体的にどの情報が漏洩したのか、それが電子メール、Webサイト、内部ネットワークなどどのルートから漏れたのか、その影響が企業内部にとどまっているのか、それとも外部にも及んでいるのかを調査します。
情報漏洩の発生状況を正確に把握するためには、情報管理の専門家やITスタッフなどが連携し、全力で取り組むことが必要です。
そして、それらの情報を基に企業全体で対策を立てるべきでしょう。
情報漏洩の原因を突き止める
次に、情報漏洩の原因を明らかにすることが重要です。原因を突き止めないと同じ失敗を繰り返す可能性があるからです。
情報漏洩の原因はさまざまですが、たとえば、社員の不注意、システムの脆弱性、外部からの攻撃などが考えられます。
原因を調査する過程では、漏洩した情報の種類、漏洩した経路、漏洩が発覚した時期など、多角的な視点から分析を行います。
また、可能であれば外部の専門家に依頼し、より客観的な視点から調査を進めることも有効です。
情報漏洩の事実を公表する
情報漏洩が発生した場合、企業としてはその事実を公表する義務があります。とくに、個人情報が含まれる場合、該当する個人や関係機関に対してすみやかに通知することが法律で求められています。
事実を公表する際には、漏洩した情報の種類と量、漏洩した経緯、今後の対策などを明確に伝えることが重要です。
また、関係者に対する誠意ある対応を心がけ、信頼回復に向けた取り組みを示すことも忘れてはいけません。
補足:情報漏洩はすみやかに報告させる
情報漏洩が発生した際は、できるだけ早くその事実を報告することが重要です。事実を隠蔽しようとすると、状況がさらに悪化する可能性があります。とくに、個人情報が漏洩した場合、遅れて報告してしまうと法的な問題を引き起こすこともあります。
企業内部での報告体制を整え、社員が情報漏洩を感知した場合、すぐに報告できる環境を作ることが必要です。また、報告があった場合には迅速かつ適切な対応ができるように、事前に対応計画を策定しておくことも大切です。
企業が情報漏洩対策をする前に行うべき準備
情報漏洩対策を行う前に必要なのは、自身の置かれている状況を正確に理解し、対策を施すべき箇所を特定することです。むやみにセキュリティツールを導入したり、IT担当者が独断で進めてしまっても、それが本当に必要なところに対策が施されているとは限りません。
重要なのは、自己分析からスタートすることです。
まず、自社が保護すべき情報は何か、その脅威はどこから来るのかを明確にすることが大切です。顧客情報や研究データ、個人情報など、守るべき情報の種類を洗い出すことから始まります。情報の種類によって必要となる対策は異なるからです。
また、自社がどのようなリスクにさらされているかの分析も不可欠です。これは、IT領域だけでなく、社内での書類の管理方法なども含まれます。セキュリティリスクはデジタル空間だけでなく、実際の職場環境にも存在します。
さらに、ISOなどの認証を取得することも情報漏洩対策には効果的です。認証を取得する過程で、自社の現状を深堀りすることが求められ、リスク分析や自己分析を行う良い機会となります。
このような認証は、定期的にリスクを洗い出し、それをカバーするためのアクションを取り続ける企業にのみ与えられます。
情報漏洩対策は、自社の現状を把握し、対策が必要な箇所を特定した上で、具体的な施策を打ち出し、それを定期的に見直すというサイクルを整えることが重要です。その一連のプロセスが、情報漏洩対策をより強固なものにする秘訣と言えるでしょう。
まとめ
情報漏洩対策は、企業にとって避けて通れない重要な課題です。それに対応するためには、適切なリスク分析と自己分析が必要で、これによって対策を施すべき具体的な箇所を明らかにします。そして、その対策が効果を発揮するよう、定期的に見直しと改善を続けていくことが求められます。
このような取り組みには専門的な知識と経験が必要となりますが、すべての企業がこれを内部で完結させることは難しいでしょう。そこでオススメなのが、ITコンサルティングの専門家によるサポートです。
私たちアスエイト・アドバイザリーは、デジタルフォレンジック、コンプライアンス、脆弱性対策という3つの観点からアドバイスを提供します。自社のセキュリティ体制を見直したい、改善したいと考えている企業のために全力でサポートを行います。
情報漏洩対策は単に問題を防ぐためだけではありません。企業の信頼性を保ち、事業の成長にも直結しています。私たちアスエイト・アドバイザリーと共に、より安全で信頼性の高いビジネス環境を整えることを目指しましょう。