巨額の横領事件が世間を賑わせています。最近では、楽天モバイルに巨額の水増し請求を行い、同社から約25億円もの詐取をしていたという事件が衝撃的でした。

こういった事件が報道されると、弊社への相談も増加します。相談内容は2パターンです。

1つ目は、どうにか社内で解決しようとしていたが、やはり大ごとになる前にプロに頼もうと思って相談したというケース。もうひとつは不正自体は明るみになっていないものの、不安解消のために相談するケースです。

事実、事件として報道されていない横領事件はとても多く、知らない間にも横領事件は様々な企業で起こっています。今回の記事では、弊社への横領の相談事例を元に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

横領に関する相談内容

1,経理による横領

経理を1人で担当しており監視の目が届いていなかった結果、何年にもわたり帳簿の改ざんが行われていたという相談です。

仕入れ額をいじって着服したり、他の社員の給与を少しずつ減らして給料をピンハネしていたりしていたのですが、他の社員も気付いていませんでした。そして何年も不正を行ったことで、横領額が何千万円にまで膨れ上がっていたそうです。

そんななか別件で数字ズレがあり、その件で横領していた経理が辞め、その後新しい人が入ったことで多くの不正が発覚したそうです。

横領を行った経理は、会計ソフトのデータを消していたため、データを復元して証拠を集めたいと弊社にご相談いただきました。

弊社としましては、会計ソフトのデータを復元して新しいアカウントにインポートして、エクセル表を復元し、書類を揃えてご提出いたしました。

2,情シス担当による横領

古いパソコンや使っていないパソコンを整理して売って、新しいパソコンを買うという業務が情報システムの担当でした。

横領の実態としては、パソコンを購入する際のポイントを横領し、貯めたポイントで私物を買うということから始まったようです。

その後横領はエスカレートし、古いパソコンから新しいパソコンに切り替える際に必要となる差額の申請書を偽造していました。その差額は現金として引き出すのですが、申請書を偽造して現金を多く引き出していたようなのです。

国税局から指摘が入ったことで発覚し、証拠を集めるためにフォレンジックの依頼を頂きました。改ざんした小口伝票やメールのやり取り、買ったものなどをパソコンで管理している可能性もあるため、まずは本人のパソコンを調査しました。その結果、改ざんした小口伝票を復元することができ、本人に罪を認めさせることができました。

横領が発覚した場合どうしたらいい?

横領が発覚した場合、

・懲戒解雇

・不正を起こせない環境下に配置換え

・会社が損害賠償する

・警察に通報

などの選択肢があります。

実際のところ警察に通報までするケースは稀ですが、弊社では多数の横領案件に関わらせていただいておりますので、調査後の対応についてもご相談ください。

横領の場合で特定が難しいケースはある?

会社のスマホやパソコンではなく、個人のスマホでやり取りをしていたり、個人のアカウントを使ったオークションで売りさばくなどをされていると特定しづらいということもあります。ただし、何らかの証拠を残していることも多いので、まずはご相談いただければと思います。

横領させないための対策

横領が発生しやすい環境は「不正のトライアングル」の3つの条件が揃った環境です。「不正のトライアングル」とは、

①機会:お金周りで他の人の目が届いていない

②動機:お金に困っている

③正当化:給与や待遇に不満があるなど「会社に搾取されている」という思い込み

です。

横領させないためには、この3つを発生させない取り組みが重要なのです。

【従業員のセキュリティ教育】

例えば不正できる「機会」を減らすには、日頃の業務から従業員のセキュリティリテラシーを高めておく取り組みがおすすめです。

従業員のセキュリティリテラシー向上のための教育を行うことで、日頃の業務から不正を発見できる仕組みを作るのです。また、過去には「会社の規則に書いていないからやってもいい」と言っていた人がいました。細かくは規則に書かれていないとしても、実際のケースを交えながら話して、不正の線引きをしていくことは大切です。常に周りの従業員のセキュリティリテラシーが高い状況だと、不正のトライアングルのひとつである「機会」も発生しにくくなります。

【ログ監視サービス】

また、日々進化するサイバー攻撃や内部不正・犯行をはじめとする事件事故は今後も増加すると考えられています。不正が起こりやすい状況をつくらないことはもちろんですが、不正にいち早く気付くということも重要です。

例えば内部不正は犯行が行われる前に兆候がある場合が多いです。そのため、通常とは違ったオペレーションによる異常検知や、侵入記録、イベントのログ収集を分析することで、不正にいち早く気づき、対策を打つことが可能となります。また、外部から監視を行うことは内部からの監視にプラスして抑止力となるでしょう。小さな不正から見逃さないことが重要なのです。

【内部通報窓口システム】

そして、「内部通報窓口システム」も大切です。組織は成長して大きくなればなるほど、監視の目が届きにくくなってしまいます。そのため、不正を防ぐには従業員同士による通報で不正を見つける機会を増やすことも重要です。最近では、会社をよりよくしたいという熱意からこのような内部通報システムがある企業を選ぶ方も増えているようです。社員にとっても会社にとってもメリットのある「内部通報窓口システム」を導入してみてはいかがでしょうか?

横領の疑いが発覚した場合

万が一横領が発覚した場合、早めの弊社への相談が事態を素早く解決するためのカギとなります。横領している本人が疑われていることに気付いてしまうと、証拠を消されてしまう可能性があるためです。

会社が疑っていることに本人が気付いていないうちが、証拠を集めやすく大ごとに発展するのを防げます。特に絶対にしてはいけないのが、本人にいきなり問い詰めるということです。しらばっくれて証拠を消されてしまったら、罪を認めさせることが難しくなります。もし、横領の疑いが発覚したら早めにご相談ください。